作者は1人じゃない!?『キリストの洗礼』ダヴィンチとヴェロッキオによる傑作!

今回ご紹介する作品は、アンドレア・デル・ヴェロッキオレオナルド・ダ・ヴィンチによる合作『キリストの洗礼』です。

この作品は図像・構図共にシンプルな絵画ですが、作品の背景が非常に面白く興味深い作品になっています。

 

『キリストの洗礼』


画像元: https://ja.m.wikipedia.org/wiki/キリストの洗礼_(ヴェロッキオの絵画)

これはかの有名な”レオナルド・ダ・ヴィンチ”とその師匠であるアンドレア・デル・ヴェロッキオ、また、その生徒たちによって描かれた合作絵画です。

 

この絵画は、タイトルの通り「新約聖書」にある”洗礼”を題材に描かれました。

 

”そもそも洗礼とはなんなのか?”

洗礼はキリスト教に入信する際神の恩恵を信者に与える儀式の1つとされています。

しかし、メシア(救世主)であり教祖のキリストが受ける洗礼は他とは少し違うようですね。

 

 

聖書のどんな場面?

この作品は、『新約聖書』の中のある場面です。


キリストを洗礼したヨハネは、荒野に現れ

『私よりも優れた方が後から来られる、私はそのお方の履物の紐をかがんで解くことすらおこがましい。私は貴方々に水で洗礼を行なったが、その方は精霊で洗礼をお授けになる。』

 

その後、イエスが現れヨハネは『私こそ、あなたから洗礼を受けるべきなのですが』と言いながら洗礼を行いました。

川から上がるとすぐに、天が裂け「霊」が鳩のようにイエスに降ってきました。

 

そして『あなたは私の愛する子、私の心に適う者』という声が、天から聞こえたといいます。

 

 

作品解説

この作品の登場人物は

中央  イエス

右  ヨハネ

左  洗礼を終えたイエスを迎えにきた天使が2人

 

イエスの頭の上には降りてきている鳩(精霊)とそれを遣わした「神の手」が見えます。

 

よく見ると右上の方に”黒い鳥”がいますね。

これは「異端のシンボル」とされています。

神の手から放たれた清い鳩と対をなしていますね。

これは、洗礼によってない良くものを追い出すという見方があります。

 

注目ポイント①

まず、このイエス(左)と洗礼者であるヨハネ(右)の2人を見て何か”違和感”を感じませんか?

 

イエスの身体を見てください。

とても柔らかな印象を受けませんか?

 

それに対してヨハネの身体は、腕や手の甲の血管や鎖骨がくっきりと浮かび上がっており、とてもゴツゴツした印象がありますね。

 

これは2人を対称的に表していますね。

 

注目ポイント②

この左下にいる2人の天使を見てください。

 

2人とも幼子のような清らかな表情をしていますね。

しかし、右の天使はイエスやヨハネがいる方とは違う方向を見ています。

まるで洗礼に興味がないようにすら見えます。

それとは対称に左の天使は、しっかりとイエスの方を見ており、その洗礼を見届けようとしています。

 

注目ポイント③

最後に注目して欲しいのが、”背景””水面”です。

背景(遠景)には、『空気遠近法』と呼ばれるダ・ヴィンチが得意とする表現法が使われています。

近くのものをはっきりと描いて、遠くのものはぼんやりと薄く描く。

まるで現実のようなその遠景から分かるように、細部までこだわって描かれており、無駄な描写は一切ありません。

 

そしてイエスとヨハネの足元の水面を見てください。

絵とは思えないほどリアルで透明感のある水面もダ・ヴィンチによって描かれており、ダ・ヴィンチの技術には圧巻です。

 

第3者たち

この作品を描いた人たちは解剖学に秀でて、人体の構造は精密に描かれ、明らかに学問を修めていたことが見られます。

しかし、描かれているその衣類は生硬い印象があり、「ダ・ヴィンチ、ヴェロッキオ以外の人間が描いたのではないか」という説があります。

このことからヴェロッキオの”生徒たち”が描いたのではないかといわれています。

 

複数人で制作されたため、バランスや調和が乱れている部分はありますが、”ヴェロッキオの傑作”と言われる作品であるのには間違いありません。

 

また、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』は、この絵の形式に従い描かれたとされています。

サンドロ・ボッティチェリ(1445 – 1510)もまたヴェロッキオの工房にいた芸術家の1人です。

このボッティチェリも弟子ではなく、助手という立場で作品に携わっています。

 

 

制作について(担当)

この作品を制作するにあたって誰がどの部分を描いたのかご紹介していきます。

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた部分

遠景

水面

イエスの身体

天使(左)

 

ダ・ヴィンチが描いた部分に共通しているのは、繊細で柔らかな色使いです。

天使の表情は美しく柔らかい印象を受け、イエスの身体もヨハネと対称的に見えるよう上手く描かれており、遠景や水面の技術に関しては圧倒的ですよね。

 

サンドロ・ボッティチェリの描いた部分

天使(右)

 

ボッティチェリの作品を見たことがある人は分かると思いますが、この天使の表情の描き方や淡い色使いは、ボッティチェリの作品に出てくる人物と似ています。

 

弟子たちが描いた部分

赤い楕円で囲っている部分が、弟子たちによって描かれた部分だといわれています。

確かに良く見ると他とは描き方や色使いが違いますね。

 

そしてこれら以外の部分を描いたのがアンドレア・デル・ヴェロッキオなのです。

ダ・ヴィンチの師匠なだけあってさすがとしか言いようがありませんね。

 

 

作者の2人について

レオナルド・ダ・ヴィンチ

レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci – 1452〜1519)

誰もが知るイタリアのルネサンス期を代表する天才芸術家です。

絵画や彫刻で有名ですが、実は「武器の発明」「科学の研究」でも多くの功績を残した正真正銘の天才でした。

14歳の頃には、師匠であるヴェロッキオを感心させるほどの才能を露わにしており、着々とその才能を磨いていきました。

 

 

アンドレア・デル・ヴェロッキオ

アンドレア・デル・ヴェロッキオ(Andrea del Verrocchio – 1435〜1488)

知る人ぞ知るフィレンツェ出身の芸術家です。

画家だけでなく、彫刻家、建築家、鋳造家、金細工師という様々な顔を持ちます。

彼が有名な理由は「レオナルド・ダ・ヴィンチの”師匠”」だからです。

しかし、14歳のダ・ヴィンチの才能に感心し自分の大規模な工房で修行させるなど、現在誰もが知る”レオナルド・ダ・ヴィンチ”を育て上げたことは間違いありません。

 

他にもボッティチェリやその他の弟子たちも描いてはいますが、あくまで助手や手伝いとしての役割なので省きます。

 

最後に

掘れば掘るほど先の見えない奥深い作品ですね。

現在はウフィッツィ美術館に展示されています。

ダ・ヴィンチの作品を展示してある部屋に、『キリストの洗礼』同様ダ・ヴィンチがヴェロッキオと合作した『受胎告知』作品と共に展示されています。

ここで紹介した作品の背景を踏まえて、本物を見るとより感動できるのではないでしょうか?

一度きりの人生ですから一度は足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

 

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